シャッター音を傍らに ー川上信也撮影日記ー

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zoom RSS 写真と音楽 Moon Rose

<<   作成日時 : 2016/11/01 22:07   >>

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普段から音楽を聴きながらいろんな作業をしているけれど、撮影の時、写真集制作の時は一段と大切になってくるように思う。聴いている音楽によって写真も明らかに変わってくるという実感があるし、編集作業などの時は気分次第で全然別のものが出来上がったりするので、音楽が与える心理的な影響はずいぶん大きいものではないかと思う。
 2011年に出版した「フクオカ・ロードピクチャーズ」を制作している時は、ずっとビーチ・ボーイズ」の「ペットサウンズ」を流していた。このアルバムはいつ聴いても新しい発見があるし、不思議なコードでの音づくり、コーラスの美しさ、考え抜かれた曲の順番など、どれをとっても信じられないくらい完璧につくられたものなんだろうなと思えてくる(唯一ジャケットだけは失敗だと思うんだけど)。こんなアルバムを聴きながら作業していると、やはり単純な僕はいろいろと刺激を受けてしまうわけで、写真の順番が与えるインパクトの強弱、時に静かに時に激しく、そして読者に創造力を与えるような奥の深い仕掛け、さらに世界を広げる文章などなど、様々な場面で影響されてくる。そして完成した写真集は、もちろんお気に入りだ。福岡の写真集ってことが分かりにくいという声があるけれど、分かりやすくないということがとても刺激的じゃないかと勝手にいいように解釈している。なにしろ縦横も分からない表紙なので。こんな本はなかなかないです、はい。
 
 今月完成予定の「阿蘇くじゅう 朝の光へドライブ」という写真集は、集中的に2年半ほど撮影を続けてきてまとめたもの。前日の夜から出発し、撮影は早朝から、という状況が多かったので、車で聴く音楽というのはとても大切だ。聴く音楽によっては気分がまったく乗らないこともあるし。 夜出かけるときはビートルズをはじめ、60年代ロックや奥田民生で気分を盛り上げることが多かった。もちろん眠気覚ましの意味合いもあるんだけれど。 学生の頃から好きだった吉田拓郎の曲はまったく合わないということが分かり、ほとんど聴かずじまい。拓郎の曲を聴くと学生の頃の迷い続けてる辛い時代が思い出されて、一人で大自然の撮影に向かう車では気分をとにかく下げてしまう。「たどり着いたらいつも雨降り」なんて聴いたら気分もどしゃ降りだし、実際の天気も大荒れになりそうな気配だ。

 ジャズはとてもいい。夜の帳ってこういう時間の流れの中に見えてくるんだなとか、普段考えないことがふと頭をよぎるのはジャズを聴いている時。だから阿蘇くじゅうの撮影に向かう夜はロックに加えてジャズだった。僕はジャズにはそんなに詳しくはないけれど、写真仲間のご年配の方から何枚もジャズのCDをいただき、それを中心に聴いている。中でも最高の一曲はFranklin Clover Sealsの「Mr.Bolangles」。この曲の美しさは黄昏、夕暮れ、夜更け、さらに星の瞬きまでの美しさそのものだ。
 
 そして撮影開始の夜明け前から朝の音楽。高原で迎える朝の気分をさらに盛りあがてくれる音楽。ビーチボーイズもビートルズもまったく合わない。当然ながら吉田拓郎(今回出番なし)も。おそらく僕の中では朝の阿蘇くじゅうでロック、邦楽は合わないのだ。ジャズも夕方から夜の雰囲気が強くて朝の空気に違和感さえ感じてしまう。
 結局選んだのはクラシック。
 クラシックの曲にはかなり好き嫌いがあるんだけど、この朝の高原にぴったりの音楽を見つけた。数曲あるけれど、まずはベートーベンの「田園」。これはこの音楽の世界そのものが目の前に広がっているというイメージだ。第二楽章の終わりにはクラリネットでかっこうの鳴き声の演奏が聴かれるが、このかっこうの演奏と早朝の飯田高原に響く本物のかっこうの鳴き声が重なった時、これはものすごい感動だ。原もいっしょに交響曲を奏でているじゃないかと。 それからモーツアルトの「グランパルティータ K361」 バッハのG線上のアリア と続けばこれは僕とって朝の高原撮影の最高の組み合わせとなる。この音楽のおかげもあってか、ほんといい撮影ができた。車内に「田園」が流れ始めると、奇跡の光景に出合えるような気持ちになってくる。
 
 そしてこの頃、この新しい写真集をまとめている時間には「サイモン&ガーファンクル」を流していた。美しいメロディもちろん大好きだけれど、ポール・サイモンの詩の世界が独特で、様々な光景がリアルに迫ってくるようなイメージがある。
中でも「アメリカ」。この曲の詩は短編小説のようで、虚しさといった感情の表現まで心に突き刺さるように響いてくる。また旅の途中、バスの窓からの光景などはたった一言で世界が広がってくる。広い野原の先から月が昇ってくるというシーン、とても好きな箇所だ。「Moon Rose」という単語が歌詞カードにはあった。僕はこの歌の中の二人はバスからバラ色の月が昇ってきたところをしんみりと眺めてたんだろうな、いや彼女はマガジンを読んでたから気づいてないのかも。そしてピンク色の月の光がやがてバスを包んでゆく、とそんな想像をしていた。僕の写真集には車窓から見えた月が沈んでゆくシーンの写真を掲載している。この時の月は満月だったので、地平に沈む頃には淡いバラ色のようなピンク色をしていた。この「アメリカ」を聴きながら、この久住高原での月のシーンを思い浮かべていた。僕の場合一人だったけれど。
でも「Moon Rose」ってほんとにあるのかな、と調べてみたところ、確かにヨーロッパでは満月をバラ色にたとえた表現があるらしい。でもしっかり歌詞を読んで気づいてしまったのだが、これは「Moon Rose」という名詞ではなく、Rose は 昇る Rise の過去形だったんですね。あれま。 
でもまあ僕はそんなムーンローズのような好き勝手な想像を音楽からいただきながら、写真を撮影したりまとまたりしている。
この写真は写真集に掲載とは別カットの久住高原で見た正に「Moon Rose」。 今では撮影していた時に聴いていた音楽とはまったく違う音楽、「アメリカ」のメロディが聴こえてくる。音楽によってさまざまな世界が新たに生まれてくるようだ。
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